「NISA、まだやってないの?」
「みんなやってるよ」
「NISAはやったほうがオトクだよ」
そう言われて、なんとなく焦った経験はありませんか。
この記事では、NISAという制度そのものの話ではなく、
NISAを「始めるべきもの」「始めなければいけないもの」として扱う風潮に、あえて立ち止まって考えてみたいと思います。
先に結論を書くと、
NISAは優れた制度ですが、全員が今すぐ始めるべきものではありません。
◆この記事を読むとわかること
- 「やらなきゃ」という空気に流され、投資を始めた人の結末
- 投資は「目的」ではなく「手段」であること
- 周りの空気に流されないための3つの問い
FP資格を持つ現役教員のくりはら けんが、相談を受けてきた実感をもとに解説します。
「NISAは正解」という空気が強くなっている
ここ数年、個人の資産形成として「投資」や「NISA」という手段が浸透しました。
「貯金だけではいけない」
「投資をしなければ」
「まずはNISAから」
と思っている人も少なくないのではないでしょうか。
非課税で資産運用ができるNISA制度が段階的に拡充され、
雑誌や書籍、SNSでもよく見かけるようになりました。
このNISAは優れた制度です。
私自身も活用していますし、否定するつもりはまったくありません。
ただ、気になるのは、
「NISAをやっていない人は、お金の知識がない人」
「NISAをやっていない人は、将来のことを考えていない人」
という空気が、いつのまにか出来上がっていることです。
「やらなきゃ」で始めた同僚Aさんの話
私の同僚に、NISAが話題になったタイミングで投資を始めたAさんがいます。
きっかけは「みんなやってるよ」のひと言でした。
Aさんは、勧められた商品を月1万円から積み立て始めます。
金額だけを見れば、決して無理のある額ではありません。
ただ、Aさんは家計管理をおろそかにしていました。
毎月の収入はいくらか、支出はいくらか、それを把握しないまま、投資だけが先に始まった状態です。
やがて、生活費の足りない月が出てきます。
足りない分はクレジットカードで補い、それが続いてやがて利用限度額に届きました。
それでも生活費は足りません。
その間、Aさんは積み立てた商品の評価額も気にし続けていました。
増えているのか、減っているのか。
目の前の生活が苦しいほど、その数字は重くのしかかります。
そして始めてから1年足らずで全額を売却し、Aさんは投資から撤退しました。
つまづいた原因は「月1万円」ではなく「順番」だった
誤解のないように書いておきますが、Aさんがつまづいた原因は積立額ではありません。
原因は、家計の全体像を把握しないまま、投資だけが先に始まってしまったこと。
土台となる家計が整っていなければ、たとえ少額でも投資は生活を圧迫する支出になります。
今振り返れば、あのときAさんに必要だったのは「投資」ではなく「家計を整えること」でした。
Aさんは多趣味で、いろいろな経験を積み重ねている人です。
その一方で、日々のお金の不安を漏らすことも少なくありませんでした。
もし先に家計を整えていれば、同じ月1万円でも、Aさんは今も続けられていたはずです。
始めること自体は悪いことではありません。
でも、「なぜ始めるのか」「今の自分にとっての優先順位が高いものはなにか」が抜け落ちたまま始めてしまうと、こうした結果につながりやすいです。
周りの空気で始めたものは、その空気が崩れたとき(=周りが騒ぎ始めたとき、相場が下がったとき)に、簡単に崩れてしまいます。
NISAを始める前に:投資は「目的」ではなく「手段」
ここで、あらためて考えてほしいことがあります。
「投資をする」こと自体は、目的ではありません。
投資は、何かに備えるための「手段」にすぎないのです。
にもかかわらず、「投資をすること」がいつのまにか目的化してしまっている人を、よく見かけます。
だからこそ、投資を始める前に、次のことを明確にしてほしい。
なんのために投資をするのか。何に備えてお金を増やしたいと思うのか。
もちろん、現在投資をしている方も、同様に振り返ってみてほしい。
あなたはなんのために投資をしているのですか?
- 老後資金に備えるため?
- 子どもの教育資金を準備するため?
- それとも、その他の目的?
この問いに、自分なりの答えを持てているでしょうか。
「なんとなく始める」ことも、経験値としては悪くないかもしれません。
実際にやってみないとわからないことも、確かにあります。
でも、目的がないまま始めた投資は、メリットを感じづらく続かなくなりやすいです。
金額の設定も、
続けるモチベーションも、
途中でやめる・見直すタイミングの判断も、
すべて「何のためにやっているか」が軸になるからです。
まずは、目的を明確にしてから投資を始めてみましょう。
投資に「みんなの正解」はない
NISAに限らず、お金の使い方には、本来「その人にとっての正解」しかありません。
- 将来への不安が強い人なら、貯蓄を厚めにするのが正解かもしれません
- 今の生活の充実を優先したい人なら、投資に回す金額は少なめが正解かもしれません
- そもそも、まとまった貯蓄がまだない状態なら、投資より先にやるべきことがあるかもしれません
私自身、奨学金の返済を抱えていた時期は、投資よりも返済と生活の安定を優先していました。
その時期の自分にとっては、それが正解だったと思っています。
「みんながやっているから」ではなく、「自分の状況にとって必要か」で判断すべきものなのです。
「周りの空気に流されない」ための3つの問い
「NISAはやったほうがいい」という空気に流されないために、以下の3つを自分自身に問いかけてみましょう。
①その投資の目的を、自分の言葉で説明できますか?
「みんなやっているから」
「なんとなくやったほうがいいと聞いたから」
ではなく、
「老後の生活費の一部にしたいから」
「子どもの教育費を準備したいから」
など、自分の目的をはっきりと言葉にできるかを確認します。
②投資をしなかったとき、自分にとって困ることはなんですか?
投資をしなかったとき、つまりやらない選択肢をとったとき、困ること。
これが思いつきますか?
- 自分の資産が目減りしてしまう
- 老後資産が準備できなくなってしまう
- 教育資金が準備できず、教育ローンを利用せざるを得なくなってしまう
など、やらないことで具体的に何が困るのかを考えてみましょう。
ここで、なんとなくという人は「別に今すぐ困らない」ことに気づく場合があります。
その場合は、焦って投資を始める必要はありません。
③投資したお金が半減しても大丈夫ですか?
①、②の両方に自信を持って答えられた人も、注意が必要です。
投資はあくまでリスク資産です。
日々金額が上下し、心の安定が保てなくなってしまうこともあります。
そんなときに問うてほしいこと。
投資した資産の評価額が半減しても、家計は大丈夫ですか?
例えば、月3万円を2年間積み立てた元金72万円。
それが36万円になった状態でも安心して生活できますか?
周りの空気で始めると、つい金額も大きくなりがちです。
生活防衛資金(月の生活費の約6ヶ月分)を削ってまで投資に回していないか、立ち止まって確認しましょう。
まとめ:制度を否定するのではなく、動機を確認しよう
この記事で伝えたいのは、「NISAをやめたほうがいい」ということではありません。
伝えたいのは、
「やるかどうか」より先に、「なぜやるのか」を自分の言葉で持っておいてほしい
ということです。
- 「みんなやっているから」で始めたものは崩れやすい:目的が抜け落ちると、相場が崩れたときに続かない
- 「投資をする」は目的ではなく手段:何に備えてお金を増やしたいのかを明確にする
- NISAは優れた制度だが、万人にとっての「正解」ではない:自分の状況に合っているかを考える
- 3つの問いで自分の動機を確認する:目的・困りごと・無理のない金額を確認してから始める
周りの空気に流されて焦る前に、一度立ち止まって「自分にとっての正解」を考えてみてください。
投資の前に、家計を見直したいと思ったら、「固定費」を洗い出してみましょう。
ぜひ、↓の記事も見てくださいね。

ここまで読んでくださって、ありがとうございました!
くりはら けんでした!



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