高額療養費だけじゃない|医療費を減らす「付加給付」の話【FP教員が解説】

お金のこと

入院や手術で、医療費が100万円かかったとします。
あなたはいくら払うことになるでしょうか。

答えは、25,000円かもしれません。

こんにちは、くりはら けんです。
公立高校で教える現役のFP教員です。

カギになるのは「高額療養費制度」と、あまり知られていない「付加給付」の2つ。

この記事では、高額療養費制度と付加給付について解説し、医療費として準備しておくべき金額や民間保険を見直す際のポイントを述べていきます。

もしものときの出費を考えたうえでの家計管理、ライフプランをする。
これを考え、よりよい人生を送っていきましょう。

この記事の結論
  • 医療費100万円でも、窓口の自己負担は約9.3万円。
    (年収370〜770万円の区分ウ・2026年8月〜)
  • 健保組合・共済組合なら「付加給付」でさらに下がり、2.5万円程度になることも。
    しかも自動で振り込まれる。
  • まずやることは1つ。
    保険証の「保険者名」を検索するだけ。

まず押さえたい「高額療養費制度」

私たちが病院の窓口で払っているのは、かかった医療費の3割です。
(年齢や自治体によって1割・2割・無料の場合もあります)

例えば、1万円が医療費としてかかった場合、窓口で支払う金額は3,000円。

ただ、3割でも医療費そのものが大きければ、負担は重くなります。

医療費100万円なら、3割で30万円。

これは、多くの家庭にとって簡単に出せる金額ではありません。

そこで登場するのが高額療養費制度です。

この制度により、1か月に払う医療費の自己負担額には、上限が決まっています。

上限は収入によって変わります。

70歳未満の方の場合はこうです。

区分標準報酬月額(年収の目安)1か月の上限額
83万円以上(約1,160万円〜)270,300円+(医療費−901,000円)×1%
53万〜79万円(約770万〜1,160万円)179,100円+(医療費−597,000円)×1%
28万〜50万円(約370万〜770万円)85,800円+(医療費−286,000円)×1%
26万円以下(〜約370万円)61,500円
住民税非課税36,900円

※2026年8月診療分からの金額

平均的な会社員が当てはまるのは、多くの場合「区分ウ」です。

区分ウの人が医療費100万円の治療を受けた場合、自己負担は約9.3万円

30万円が9.3万円になる。これが高額療養費制度の力です。

通りすがりの会社員
通りすがりの会社員

上限があるのはわかった。
けど、大きな病気になって長期間入院となったら「約9.3万円✕月数」がかかっちゃうんでしょ?
結局高い金額を払うことになるから不安だなぁ。

くりはら けん
くりはら けん

確かにそうですね。
けれど、直近12ヶ月で3回以上、上限の金額になった場合は多数回該当になり、さらに安くなりますよ。

多数回該当となったら、さらに自己負担額が抑えられます。
多数回該当になった場合は、4か月目から上限がもっと下がります
たとえば、区分ウのときは44,400円です。


【参考サイト】高額療養費制度を利用される皆さまへ(厚生労働省)

2026年8月から自己負担の上限額の引き上げ

ひとつ、押さえておきたいニュースがあります。

2026年8月の診療分から、すべての所得区分で上限額が引き上げられました。

たとえば区分ウは、80,100円ベースだったものが85,800円ベースになっています。

一方で、負担が軽くなる変更もあります。

  • 多数回該当の金額は据え置き(長く治療が続く人への配慮)
  • 年間上限が新設(8月〜翌年7月で、区分ウ・エなら53万円)

2027年8月には、所得区分がさらに細かく分けられる予定です。

さらに自己負担を下げる「付加給付」

ここからが、今日いちばん伝えたい話です。

高額療養費は、国の制度です。

それとは別に、健康保険組合や共済組合が独自に上乗せしている給付があります。

これを「付加給付」と呼びます。

私は公立高校の教員なので、公立学校共済組合に加入しています。
そこには「一部負担金払戻金」という給付があります。

内容はこうです。

自己負担額が以下の表に掲げる自己負担限度額を超えた場合、給付されます。

一部負担金払戻金等の自己負担限度額25,000円
(上位所得者(標準報酬月額530,000円以上)50,000円)
合算高額療養費が給付される場合における
一部負担金払戻金等の自己負担限度額
50,000円
(上位所得者(標準報酬月額530,000円以上)100,000円)

公立学校共済組合「療養の給付・家族療養費/一部負担金払戻金・家族療養費附加金」より引用

難しく書いていますが、結局のところ、1か月の自己負担は実質25,000円が上限ということです。

先ほどの医療費100万円の例で比べてみます。

【医療費100万円の場合】窓口での自己負担
3割負担のみ300,000円
 + 高額療養費約93,000円
 + 付加給付(公立学校共済組合の場合)25,000円

30万円が、2.5万円。
10分の1以下です。

しかもこの給付、請求しなくても自動的に振り込まれます(受診月の3〜4か月後)。

知らないまま受け取っていた人も、実は多いはずです。

最終的な負担額は上記のとおりですが、支払いのタイミングや額は、状況によって変わります。

  • マイナ保険証 or 限度額適応認定証を提示した場合 → 窓口で約9.3万円を支払う
  • 提示しなかった場合 → 窓口で30万円を支払い、後日払い戻し

付加給付は数カ月後の振込になるため、一時的に30万円を建て替える場面もあることに注意しましょう。

ただし、付加給付は全員にあるわけではありません

安心の制度、付加給付ですが、加入している保険者によってあったりなかったりします。

加入先付加給付
健康保険組合(大企業など)あることが多い(内容は組合ごとに違う)
共済組合(公務員・私学教職員)あることが多い
協会けんぽ(中小企業など)なし
国民健康保険(自営業・フリーランス)原則なし

自分がどれに当てはまるかは、保険証(マイナ保険証なら医療保険情報)に書かれている保険者の名前で分かります。

「〇〇健康保険組合」なら、調べる価値が大いにあります。

高額療養費制度・付加給付を知ると、民間の医療保険を見直せる

通りすがりの会社員
通りすがりの会社員

調べたら、私の加入している保険者にも付加給付がありました。
じゃあ、民間の医療保険ってどこまで必要なの?

くりはら けん
くりはら けん

貯金がある場合は、多くの場合で民間の医療保険は必要ないかと思います。
医療保険をかけすぎてしまっているケースが多いかなと感じています。

仮に、平均的な会社員で、付加給付もあり、月額の上限が25,000円だと仮定します。

この場合、月25,000円なら、貯金で十分まかなえるかもしれません。
民間の医療保険の見直しを検討してみてはいかがでしょうか。

保険は「確率低・損失大」に備えるもの

通りすがりの会社員
通りすがりの会社員

あれ?
医療保険に入ってて、得したっていう人も聞くよ。
やっぱり入っていたほうがいいんじゃない?

くりはら けん
くりはら けん

得したと感じる人もいますね。
でも、保険って「起きる確率は低いけれど、起こったときに多額の費用がかかってしまう」ときに備えるものなんだよ。

ここでいう「多額の費用」というのは、貯金では備えきれないくらいの額。
生活が成り立たなくなるくらいの額と定義します。

その多額の費用が必要となるときに準備するのが保険なのです。

これに照らし合わせると、十分な貯金があるのであれば、医療保険はいらないという結論になります。

高額療養費・付加給付の対象外の出費に注意

入院や治療に関わる費用のすべてが、高額療養費や付加給付の対象になるわけではありません。

対象外になるものは、例えば次の通りです。

  • 差額ベッド代(個室・少人数室)
  • 入院時の食事代
  • 先進医療費・自由診療費
  • 通院交通費、家族の付き添い費用

これらの費用も考慮したうえで、自分にとって必要な保障を考えてみたいですね。


すべての人にとって保険がいらないという話ではありません

次の場合は、民間の医療保険を検討してみてもいいですね。

  • 加入している保険者に付加給付がない
  • 自営業・フリーランスである
  • 十分な貯金がまだない

もうひとつ注意点を。

付加給付は組合独自の給付なので、財政状況によって縮小・廃止されることがあります

「一生このまま」と決めつけず、数年ごとに確認するのがおすすめです。

今日できる、3つの確認

難しい手続きはいりません。次の3つだけです。

1. 自分の保険者名を確認する

保険証、またはマイナポータルの「医療保険情報」で確認できます。

2. 「(保険者名) 付加給付」で検索する

「一部負担金払戻金」「療養費附加金」などの名前で載っています。

勤め先からもらった福利厚生の冊子にも、たいてい書かれています。

3. 上限額と、申請が必要かを見る

自動で振り込まれるのか、自分で請求するのか。
ここは組合によって違うので、必ず確認してください。


福利厚生の冊子って、とても読みにくいですよね。
私も最初は何が書いてあるのか分かりませんでした。

でも、よく見ていくと
「もしものとき、こういう保障があります。」
「こういうときはこれだけ戻ってきます。」
という記述が必ずあります。

医療費以外にも、出産や休業のときの上乗せ給付が書かれていることもあります。

読みにくい資料の中に、お金が眠っています。

まとめ

  • 医療費100万円でも、高額療養費で自己負担は約9.3万円(区分ウの場合)
  • 2026年8月から上限額が引き上げ。ただし多数回該当は据え置き、年間上限も新設
  • 健保組合・共済組合には、上限をさらに下げる付加給付があることが多い
  • 自分の上限額が分かると、民間の医療保険を見直せる

備えるためにお金を払うのは大切なことです。
でも、すでに備わっているものを知らずに、二重に払うのはもったいない。

今日、保険証を1枚見てみてください。
そこに書かれた保険者の名前を検索するだけで、これまで知らなかった給付が見つかるかもしれません。


※本記事の金額は2026年8月時点の制度に基づいています。付加給付の内容は組合ごとに異なりますので、必ずご自身の加入先でご確認ください。

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